DKAA小林大祐建築設計事務所

ミラノ国際博覧会 日本館
Japan Pavilion, Expo Milano 2015

※前職 北川原温建築都市研究所での担当実績
建築プロデューサー・チーフとして従事

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撮影:大野 繁
 
建築主 日本貿易振興機構 建築プロデューサー
所在地 イタリア, ミラノ郊外 北川原温+北川原温建築都市研究所
用途 国際博覧会展示館 建築設計 石本建築事務所
敷地面積 4,170㎡ 構造設計 石本建築事務所
建築面積 2,376㎡   ARUPミラノ
延床面積 4,390㎡   ARUP東京(立体木格子壁)
階数 地上2階 設備設計 石本建築事務所
構造 鉄骨造+立体木格子壁 演出照明 ライティング プランナーズ
アソシエーツ
会期 2015年5月~10月 施工 Takenaka Europe Italy


多様性を抱くうつわ

約140の国と国際機関がパビリオンを開設した2015 年ミラノ国際博覧会のテーマは「地球に食料を、生命にエネルギーを」とされ、“ 持続可能性(サステナビリティ)”が共通キーワードとして掲げられました。私たちは、日本の里山が古くから育んできた『豊かな食文化/ 森林文化/ 循環型社会』のアイデアを世界に発信することが、地球規模の食料問題に対する一つの提言になり得るのではないかと考えました。
日本の美しい四季・自然・生態系・食文化などの" 多様性を抱くうつわ "としての日本館を目指しました。




日本の里山と、循環型社会

再生可能資源である木材を適切に活用することは、ひいては森林の整備保全につながり、その森林が養分豊富な水を涵養し、その水がまた大地や海洋に還元され多様な食材が人々の暮らしにもたらされます。そのように古くから日本の里山、里海では木の活用と人々の暮らしが密接に結びつき、穏やかな循環型社会が成立していました。そのコンセプトを具体的に現わす素材として取り入れたものが、日本の伝統的な仕口・継手の技法と現代の最先端技術を融合した「立体木格子構造」です。


立体木格子/生きている構造体

法隆寺五重塔をはじめ、日本の伝統建築は木造でつくられてきました。それらは、すべて仕口や継手といった木の特性である「めり込み作用」を用いた構造です。釘を使わずにしなやかで粘り強い構造となり、まさに “生きている構造体” と呼ぶことができます。ミラノ博覧会日本館は、これら日本の伝統技法に現代の3Dシミュレーション・解析技術を用いて3次元レベルでの応用を試みたものです。


立体木格子は、115mm角×2mの国産カラマツ集成材の途中を切り欠く「相欠き継ぎ構造」となっています。単純な三次元グリッドでは1点に3つの材が交差してしまうことから、ハーフグリッド分ずらすことで単純な相欠き加工のみで組み上げることが可能となり、十分な強度を持った自立する構造となりました。


 

木漏れ日/環境のフィルター

立体木格子は、建物の「環境装置」としても作用しました。格子の合間から適度に制御された太陽光が木漏れ日のように差し込み、自然の風も透過させます。 夏季は30度以上にも達するミラノにおいて、ポーラス状の外壁が半外部である「待ち列空間」の環境を保ちつつ、日本館の内外を緩やかにつなぐ” フィルター ”として機能しました。
日没に伴ってフィルター内には照明が灯り、木格子の間から漏れる明かりと木材の陰影が” ぼんぼり ”のように外壁に浮かび上がります。


日本館は184日の会期中に入館者が228万人に達し、「自然と技術の調和」が高く評価された結果、登録博覧会において日本館として初めてとなるパビリオンプライズ展示デザイン部門金賞を受賞しました。

掲載: 『日本建築学会 作品選集 2017』
『新建築』2015年7月号
『新建築』2014年3月号
展示: 『建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの』六本木森美術館 2018年4月~9月

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